無料ECからShopifyに切り替えるべきか?手数料から考える判断基準

最終更新日:2026.01.26

初期構築

ECを立ち上げる際、BASEやSTORESといった無料で使えるプラットフォームを選ぶのは、極めて合理的な判断です。初期費用を抑え、リスクを最小限にスタートできるからです。

しかし、売上が伸び始めた段階で「このままでいいのか?」という疑問が生まれます。手数料の負担が増え、運営の限界を感じ始める。そのとき、Shopifyへの切り替えを検討する企業は少なくありません。

ただし、「Shopifyの方が安い」「売上が◯万円を超えたら切り替えるべき」といった単純な結論に飛びつくのは危険です。重要なのは、コスト構造の違いを理解し、自社の事業フェーズに合った判断をすることです。

この記事では、無料ECとShopifyの手数料構造を数字で整理し、どのタイミングで切り替えを検討すべきかを冷静に考えていきます。

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無料ECとShopifyの手数料構造の違い(2025年時点)

まず、無料EC(ここではBASEのスタンダードプランを例にします)とShopify(Basicプラン)の手数料構造を比較してみましょう。以下の表は、2025年時点の公式情報をもとにした目安です。

項目BASE(スタンダード)Shopify(Basic)
月額費用0円3,650円
決済手数料3.6%+40円約3.55%
サービス利用料3%なし
費用構造変動費(売れるほど増える)固定費+低い変動費

この表を見ると、無料ECは月額費用がかからない一方で、決済手数料とサービス利用料が毎回発生します。一方、Shopifyは月額費用が固定で発生しますが、決済手数料は比較的低く抑えられています。

この違いは、単なる金額の差ではなく、コスト構造の性質の違いを示しています。

なぜ無料ECは「実質:約7%前後の変動費構造」になるのか

BASEのような無料ECは、月額費用がかからないため「無料=コストが低い」と思われがちです。しかし実際には、注文が発生するたびに以下のコストが必ず差し引かれます。

  • 決済手数料:3.6%+40円
  • サービス利用料:3%

これを合計すると、売上に対して約6.6%+40円、つまり実質的に約7%前後の手数料が毎回発生する構造になります。

例えば、平均注文単価が5,000円の場合、1件あたり約350円の手数料がかかります。月に50件の注文があれば、手数料だけで約17,500円です。

重要なのは、この手数料が「売れれば売れるほど比例して増える」という点です。売上が伸びるほど、手数料の絶対額も増えていく。これが変動費型のコスト構造です。

立ち上げ初期や売上が少ない段階では、この構造は非常に合理的です。売れなければコストもかからないため、リスクが低い。しかし、売上が伸びるにつれて、手数料の負担が利益を圧迫し始めます。

なぜShopifyは「固定費+低い変動費構造」になるのか

一方、Shopifyは売上の有無に関係なく、毎月一定の月額費用(Basicプランで3,650円)が発生します。これは固定費です。

そのうえで、Shopify Paymentsを利用した場合の決済手数料は約3.55%と、無料ECに比べて低く設定されています。サービス利用料のような追加手数料もありません。

つまり、Shopifyは以下の構造になっています。

  • 固定費:月額3,650円
  • 変動費:約3.55%の決済手数料

この構造では、売上が少ない段階では固定費の負担が重く感じられます。しかし、売上が伸びるにつれて、1注文あたりのコスト効率が改善していく設計になっています。

例えば、月商10万円の場合、無料ECでは約7,000円の手数料がかかりますが、Shopifyでは約3,550円の手数料+3,650円の月額費用で、合計約7,200円です。ほぼ同じコストです。

しかし、月商50万円になると、無料ECでは約35,000円の手数料がかかりますが、Shopifyでは約17,750円の手数料+3,650円の月額費用で、合計約21,400円です。売上が大きくなるほど、Shopifyのコスト効率が良くなることがわかります。

ただし、ここで強調したいのは「Shopifyの方が安いから良い」という単純な結論ではありません。重要なのは、コスト構造の性質が異なるという点を理解することです。

手数料差から見る「損益分岐点」の考え方

では、具体的にどの程度の売上規模で、Shopifyのコスト構造が有利になるのでしょうか。

ここでは、BASEとShopifyの手数料差(約3.4〜3.5%)と、Shopifyの月額費用(3,650円)を基準に、損益分岐点の考え方を整理します。

前提条件

  • BASEとShopifyの実質手数料差:約3.4〜3.5%
  • Shopifyの月額費用:3,650円
  • あくまで「手数料のみ」の比較であり、機能やサポートの違いは考慮していません

考え方はシンプルです。1注文あたりの手数料差 × 月の注文件数が、Shopifyの月額費用(3,650円)を上回れば、Shopifyの方がコスト面で有利になります。

例えば、平均注文単価が10,000円の場合、1注文あたりの手数料差は約345円です。月に11件以上の注文があれば、手数料差の合計が約3,795円となり、Shopifyの月額費用を回収できる計算になります。

ただし、これは純粋に手数料だけを比較した場合の話であり、実際の判断にはさまざまな要素が絡んできます。

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平均注文単価(AOV)別|Shopify切り替えの損益分岐目安

平均注文単価によって、損益分岐点がどう変わるかを具体的に見てみましょう。以下の表は、あくまで判断の目安として参考にしてください。

平均注文単価(AOV)1注文あたりの手数料差月の損益分岐注文件数月商目安
3,000円約104円約35件約10.5万円
5,000円約173円約22件約11万円
8,000円約276円約14件約11.2万円
10,000円約345円約11件約11万円
15,000円約518円約8件約12万円

この表の読み方

この表から分かるように、平均注文単価が異なっても、月商は概ね10〜12万円前後に収束します。

例えば、平均注文単価が10,000円の場合、月に10〜15件程度の注文があれば、Shopifyの月額費用は手数料差で回収可能になる計算です。平均注文単価が15,000円なら、月8件程度で損益分岐点に達します。

逆に、平均注文単価が3,000円と低い場合は、月35件程度の注文が必要になります。

この数字を見て「月商10万円を超えたらShopifyに切り替えよう」と考えるのは、一見合理的に見えます。しかし、これはあくまでコスト面だけの話です。

手数料だけで判断してはいけない理由

Shopifyへの切り替えを検討する際、手数料の損益分岐点だけで判断するのは危険です。なぜなら、プラットフォームの選択は、コスト以上に経営判断の質に影響するからです。

以下の視点を含めて判断する必要があります。

商品別・顧客別に数字を見られるか

無料ECでは、売上や注文件数といった基本的なデータは確認できますが、顧客ごとの購入履歴や商品別の利益率、リピート率といった詳細な分析には限界があります。

Shopifyでは、どの商品がリピート購入につながっているか、どの顧客層が利益に貢献しているかを把握できます。こうしたデータがあることで、「次に何をすべきか」の判断が明確になります。

定期購入・セット販売を設計できるか

売上を伸ばすためには、単品販売だけでなく、定期購入やセット販売といった仕組みが必要になることがあります。無料ECでは、こうした高度な販売設計に対応しきれないケースが多く、事業の成長が頭打ちになることがあります。

Shopifyでは、アプリやカスタマイズによって柔軟に対応できるため、事業の成長に合わせて販売方法を進化させることができます。

仮説検証・意思決定のスピードが上がるか

EC運営では、「この施策は効果があるのか」「この商品は育てるべきか」といった仮説検証を繰り返す必要があります。データが不足していると、判断に時間がかかり、機会損失が生まれます。

Shopifyは、データの取得と分析がしやすく、判断のスピードを上げることができます。結果として、施策の精度が上がり、事業の成長速度が変わります。

つまり、Shopifyへの切り替えは「安くなるから切り替える」のではなく、**「判断できるようになるから切り替える」**という視点で考えるべきなのです。

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切り替えの合図は「判断が詰まり始めたかどうか」

無料ECは、「始めるフェーズ」に最適なプラットフォームです。初期投資を抑え、リスクを最小限にEC運営をスタートできる点は、大きなメリットです。

一方、Shopifyは「判断しながら伸ばすフェーズ」に向いています。売上が伸び、顧客が増え、商品数が増えていくと、「次に何をすべきか」を判断するための情報が必要になります。その判断の質が、ブランドの成長を左右します。

切り替えの合図は、売上額そのものではなく、判断が詰まり始めたかどうかです。

例えば、以下のような状況に直面したとき、それは切り替えを検討すべきタイミングかもしれません。

  • 手数料の負担が利益を圧迫し始めた
  • 顧客データをもっと詳しく分析したいと感じている
  • 定期購入やセット販売など、新しい販売方法を試したい
  • 法人取引や卸対応を視野に入れている
  • 現在のプラットフォームでは機能が足りないと感じている
  • 次に打つべき施策が見えず、判断に迷っている

「月商10万円を超えたからShopifyに切り替える」という単純な基準ではなく、「今の環境で、これからの事業を伸ばせるか」という視点で判断することが重要です。

手数料の損益分岐点は、あくまで判断材料のひとつに過ぎません。コスト構造の違いを理解したうえで、自社の事業フェーズと照らし合わせて考える。その冷静な判断が、ブランドの成長につながります。

よくあるご質問

結局、月商いくらくらいからShopifyに切り替えるのが得ですか?

手数料の差だけで見るなら、目安は月商10〜12万円前後です。
平均注文単価(AOV)が低いほど必要注文件数は増えますが、計算すると月商はだいたい同じレンジに収束します。
たとえばAOVが10,000円なら月11件程度、3,000円なら月35件程度が損益分岐の目安になります。

「手数料が安くなるから」で切り替えを決めても大丈夫?

おすすめしません。Shopifyへの切り替えはコスト比較というより、経営判断の質が上がるかで決めるべきです。
商品別・顧客別で数字を深く見られるか、定期購入やセット販売など“次の打ち手”を設計できるか、仮説検証と意思決定のスピードが上がるかといった観点で判断しましょう。

切り替えのタイミングは「売上」以外だと、何を意識すればいい?

判断が詰まり始めたときです。
売上が伸びてきたのに「次に何をすべきか」が見えない、顧客データをもっと分析したい、定期購入やセット販売を試したい、法人取引も視野に入ってきた、今のプラットフォームだと機能が足りない。
こうした状況が出てきたら、切り替えを検討するタイミングです。

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