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「最近、楽天やAmazonでの売上が落ちてきた気がする」「以前ほど注文が入らなくなった」
こうした声を、EC事業に携わる方から聞くことが増えました。
SNSやニュース記事でも「モールECの売上が下がっている」という話題を目にすることがあります。しかし、本当にすべての企業でモールECの売上が下がっているのでしょうか。それとも、一部の企業だけの現象なのでしょうか。
この記事では、モールECの売上動向について、現場で起きている変化を整理し、その背景にある構造的な要因を解説します。そして、多くの企業が次の一手として検討している「自社EC」への移行について、現実的な視点で考えていきます。
モールECの売上が下がっている企業が「増えている」は事実か
結論から言えば、「すべての企業でモールECの売上が下がっている」わけではありません。しかし、「以前ほど売れなくなった」と感じている企業が増えているのは、確かな傾向として存在します。
全体の市場規模は依然として成長している
まず押さえておきたいのは、EC市場全体としては依然として成長を続けているという事実です。経済産業省の調査によれば、日本のBtoC-EC市場規模は年々拡大しており、コロナ禍を経てその傾向はさらに加速しました。
楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングといった大手モールも、全体としての流通総額は伸びています。つまり、モール全体で見れば、売上は増えているのです。
それなのに「売上が下がった」と感じる企業が増えているのは、なぜでしょうか。
「売上が下がった」と感じる企業の共通点
売上が下がったと感じている企業には、いくつかの共通点があります。
まず、モール内での競争が激化している分野で事業を展開している企業です。同じような商品を扱う出店者が増えれば、必然的に競争が厳しくなり、一社あたりの売上は減少します。
次に、広告費やプロモーション施策に投資を増やしていない企業です。モールECでは、広告を活用しなければ商品が顧客の目に留まりにくくなっています。以前は自然検索で売れていた商品も、今は広告を出さなければ埋もれてしまうケースが増えています。
また、商品力や価格競争力が相対的に低下している企業も、売上減少を実感しやすい傾向にあります。モールでは価格比較が容易であり、同じ商品が複数の店舗で販売されている場合、価格や配送条件で劣る店舗は選ばれにくくなります。
つまり、「売上が下がっている」のではなく、「以前と同じやり方では売れなくなっている」**というのが、より正確な表現かもしれません。
モールECで売上が伸びにくくなっている構造的な背景
モールECで売上が伸びにくくなっている背景には、いくつかの構造的な要因があります。これらを理解することで、次に打つべき手が見えてきます。
広告費の高騰と競争激化
モールEC最大の変化のひとつが、広告費の高騰です。
楽天市場やYahoo!ショッピングでは、RPP広告(楽天プロモーションプラットフォーム)やアイテムマッチ広告といった広告メニューが用意されています。これらの広告を活用することで、検索結果の上位に商品を表示させたり、関連商品枠に表示させたりすることができます。
しかし、広告を出稿する店舗が増えれば、広告枠の競争が激化し、クリック単価が上昇します。以前は月数万円の広告費で十分な効果が出ていたのに、今は数十万円かけても同じ効果が得られないというケースも珍しくありません。
また、Amazonでも、スポンサープロダクト広告の競争が激しくなっており、広告費をかけなければ商品が見つけてもらいにくい状況が続いています。
この結果、広告費を増やせる資金力のある大手や、利益率の高い商品を扱う店舗が有利になり、中小規模の店舗は苦戦する構図ができあがっています。
モール手数料の負担増加
モールECでは、売上に応じた手数料が発生します。楽天市場では月額費用に加えてシステム利用料やカード決済手数料がかかり、Amazonでは販売手数料が商品カテゴリごとに設定されています。
これらの手数料率は、必ずしも低くはありません。売上が伸びても、手数料の負担が重く、利益が残りにくいという悩みを抱える店舗は多く存在します。
さらに、広告費も加わると、売上に対するコストが膨らみ、利益率が圧迫されます。売上は伸びているのに、利益が増えない。あるいは、利益を確保するために値上げをすると、今度は売上が落ちる。こうしたジレンマに直面する店舗も少なくありません。
実際、モールでの販売手数料と広告費を合わせると、売上の20〜30%をモールに支払っているケースもあります。この構造では、利益を確保することが難しくなります。
顧客データを自社で活用できない制約
モールECでは、顧客データはモールが管理しており、店舗側が自由に活用できる範囲は限られています。
顧客の購入履歴や属性情報を詳しく分析したり、リピーター施策を柔軟に行ったりすることが難しい場合があります。どの顧客がどの商品を何回購入しているか、どんな商品の組み合わせで買っているか、といった詳細なデータを取得し、施策に活かすことができません。
結果として、新規顧客を獲得するための広告費ばかりがかさみ、既存顧客からのリピート購入を最大化する施策が打ちにくい構造になっています。
モールのアルゴリズム変更と検索順位の変動
モールECでは、検索結果の表示順位がアルゴリズムによって決まります。このアルゴリズムは定期的に変更され、それまで上位表示されていた商品が、突然順位を落とすことがあります。
たとえば、楽天市場では、商品名のキーワードやレビュー数、売上実績、広告利用状況などが検索順位に影響します。Amazonでは、商品タイトル、価格、在庫状況、レビュー評価、販売実績などが考慮されます。
アルゴリズムが変更されると、それまでの施策が通用しなくなり、売上が急落することがあります。特に、特定のキーワードでの上位表示に依存していた店舗は、影響を受けやすい傾向にあります。
このように、自社ではコントロールできない要素に売上が左右されるリスクが、モールECには常に存在します。
モールECで売上を維持している企業と、苦戦している企業の違い
同じモールに出店していても、売上を維持・拡大している企業と、苦戦している企業があります。その違いはどこにあるのでしょうか。
売上を維持している企業の特徴
モールECでも売上を維持、あるいは伸ばしている企業には、いくつかの共通点があります。
商品力・独自性がある
他では手に入らないオリジナル商品、独自の仕入れルート、高い品質、独自のブランドストーリー。こうした要素があると、価格競争に巻き込まれにくく、顧客に選ばれる理由が明確になります。
広告運用を最適化している
広告費が高騰する中でも、効果的に広告を運用している企業は、売上を伸ばしています。単に広告予算を増やすのではなく、どの商品にどれだけ広告費をかけるか、どのキーワードで出稿するか、クリック単価をいくらに設定するか、といった細かな調整を行っています。
レビュー・評価を重視している
モールECでは、レビューや評価が購入の決め手になります。高評価のレビューが多い商品は、検索順位でも有利になり、顧客の信頼も得やすくなります。
しかし、これらの施策を行っていても、手数料と広告費の負担は変わりません。売上を維持するためのコストが年々上がっている、という現実に変わりはないのです。
苦戦している企業の共通課題
一方、苦戦している企業には、以下のような課題が見られます。
- モール内の競争激化についていけず、広告費を増やせない
- 手数料負担が重く、利益率が低下している
- 顧客データを活用したリピーター施策が打てない
- アルゴリズム変更の影響を受けやすい
こうした課題は、努力や工夫だけでは解決できない構造的な問題です。つまり、モールECだけに依存する限り、この状況は改善しにくいのです。
なぜ今、自社ECへの移行を検討する企業が増えているのか
モールECの限界を感じる中、多くの企業が次の一手として「自社EC」の立ち上げを検討しています。
モール依存のリスクを分散できる
モールECだけに依存していると、モールのアルゴリズム変更や手数料改定、規約変更などの影響を直接受けます。また、モールが何らかの理由でアカウント停止を行った場合、売上がゼロになるリスクもあります。
自社ECを持つことで、こうしたリスクを分散できます。モールで売上が落ちても、自社ECで補える。逆に、自社ECで新規顧客を獲得し、リピート購入を促すといった使い分けも可能になります。
実際、モールECと自社ECを併用している企業は、モールだけに依存している企業よりも、売上の安定性が高い傾向にあります。
手数料負担を大幅に削減できる
自社ECであれば、モールに支払う手数料が不要になります。
Shopifyを例にすると、月額費用は3,650円(Basicプラン)で、決済手数料は約3.55%です。楽天市場やAmazonと比較すると、手数料負担は大幅に軽減されます。
たとえば、月商100万円の場合、モールでは手数料と広告費で20〜30万円かかっていたのが、自社ECでは数万円程度に抑えられる可能性があります。この差額を、商品開発や顧客サービスの向上に投資できるようになります。
顧客データを自社で蓄積・活用できる
自社ECであれば、顧客データを自社で蓄積し、自由に分析・活用できます。
顧客ごとの購入履歴、購入頻度、平均注文単価、離脱のタイミングなど、詳細なデータを取得できます。このデータを活用することで、以下のような施策が可能になります。
- リピート率の高い顧客に、特別なクーポンを送る
- 購入から一定期間経過した顧客に、再購入を促すメールを送る
- 商品Aを購入した顧客に、相性の良い商品Bをレコメンドする
- 離脱しそうな顧客を早期に発見し、フォローする
こうした施策により、リピート率を高め、LTV(顧客生涯価値)を最大化できます。モールECでは実現できなかった、きめ細かい顧客対応が可能になるのです。
ブランドの世界観を自由に表現できる
モールECでは、デザインやレイアウトに制約があり、ブランドの世界観を十分に表現できないことがあります。自社ECであれば、デザインや構成を自由に設計でき、ブランドのストーリーや価値観を伝えやすくなります。
特に、D2Cブランドや高単価商品を扱う企業にとって、ブランド体験の提供は重要です。自社ECを通じて、顧客との関係を深め、単なる商品販売ではない価値を提供できます。
自社ECへの移行で直面する課題と、その解決策
自社ECには多くのメリットがありますが、同時に課題も存在します。ここでは、よくある課題とその解決策を整理します。
集客をどうするか
モールECでは、モール自体に集客力があり、モール内検索からの流入が期待できます。しかし、自社ECでは、集客を自ら行う必要があります。
モールで獲得した顧客を自社ECに誘導する
最初から自社ECだけで集客するのではなく、モールECと併用しながら、徐々に自社ECに顧客を移していく方法が現実的です。
モールで初回購入した顧客に、次回は自社ECで使えるクーポンを案内する。商品に同梱するチラシで、自社ECの存在を伝える。メールやLINEで、自社ECの特典を訴求する。
こうした施策により、モールで獲得した顧客を、自社ECのリピーターに転換していくことができます。
SNSやコンテンツで認知を広げる
InstagramやX(旧Twitter)、TikTokなどのSNSで情報発信を行い、ブランドの認知を広げることも有効です。また、ブログやYouTubeでコンテンツを発信し、SEO経由での流入を増やすこともできます。
これらの施策は時間がかかりますが、長期的には広告費に依存しない、安定した集客チャネルになります。
サイト構築・運用の知識が必要
自社ECを立ち上げるには、サイト構築や運用の知識が必要です。どのプラットフォームを選ぶか、どうデザインするか、決済方法をどう設定するか、といった判断を自ら行わなければなりません。
Shopifyなら比較的容易に構築できる
Shopifyは、EC構築のプラットフォームとして世界中で使われており、専門知識がなくてもECサイトを立ち上げられる設計になっています。
テンプレートを選び、商品を登録し、決済設定を行えば、基本的なECサイトは完成します。アプリを追加することで、機能を拡張することも可能です。
ただし、「自社に最適な設計」を行い、売上を伸ばすためには、Shopifyの特性を理解し、事業に合わせたカスタマイズを行うことが重要です。
専門家のサポートを受ける
自社だけで完璧なサイトを作ろうとすると、時間がかかり、試行錯誤も多くなります。そのため、Shopifyの構築・運用に詳しい専門家のサポートを受けることが、成功への近道になります。
専門家は、業界ごとの特性や、商品特性に合わせた設計のノウハウを持っています。また、モールECからの移行における注意点や、効果的な顧客誘導の方法についても、豊富な経験があります。
初期構築だけでなく、運用開始後のデータ分析や改善提案まで含めてサポートを受けることで、自社ECを確実に成長させることができます。
モールとの使い分けをどうするか
自社ECを立ち上げた後も、モールECを完全にやめるべきかどうかは、慎重に判断する必要があります。
モールは新規獲得、自社ECはリピーター育成
現実的なのは、モールECと自社ECを併用し、それぞれの役割を明確にすることです。
- モールEC:新規顧客の獲得チャネルとして活用
- 自社EC:既存顧客のリピート購入、LTV最大化のチャネルとして活用
この使い分けにより、モールの集客力を活かしながら、利益率の高い自社ECでの売上を伸ばすことができます。
ただし、この使い分けを適切に設計し、顧客を自社ECに誘導する導線を作るには、戦略的な設計が必要です。ここでも、専門家のアドバイスが役立ちます。
自社EC成功のカギは「適切な設計」と「継続的な改善」
自社ECを立ち上げただけでは、売上は伸びません。成功するためには、適切な設計と、データに基づいた継続的な改善が必要です。
自社の事業特性に合った設計が必要
Shopifyは柔軟性が高く、さまざまな業種・商材に対応できます。しかし、その分、「どう設計するか」で成果が大きく変わります。
食品ECなら、賞味期限や定期購入の仕組みが重要です。アパレルならサイズ選びのサポートや返品ポリシーが重要です。BtoB対応が必要なら、会員制や価格分岐の設計が求められます。
こうした事業特性に合わせた設計を、最初から適切に行うことが、成功の分かれ道になります。
データを見ながら改善し続ける
自社ECでは、アクセス数、転換率、平均注文単価、リピート率といったデータを詳細に取得できます。このデータを見ながら、「どのページで離脱が多いか」「どの商品がよく売れているか」「どの施策が効果的か」を分析し、改善を続けることが重要です。
しかし、データ分析や改善施策の立案には、ノウハウが必要です。自社だけで試行錯誤すると、時間がかかり、機会損失も生まれます。
専門家のサポートが成功を加速させる
自社ECの成功を確実にし、スピードを上げるためには、Shopifyの構築・運用に精通した専門家のサポートを受けることが有効です。
専門家は、以下のような支援を提供できます。
- 事業特性に合わせた最適なサイト設計
- モールECからの顧客移行戦略の立案
- データ分析に基づいた改善提案
- 売上を伸ばすための施策の実行支援
- BtoB対応や定期購入など、高度な機能の実装
特に、モールECから自社ECへの移行は、多くの企業が初めて経験する取り組みです。過去の成功事例や失敗事例を知る専門家のアドバイスを受けることで、無駄な試行錯誤を避け、確実に成果を出すことができます。
まとめ│モールECの限界を感じたら、自社ECという選択肢を検討する
「モールECの売上が下がっている」という話は、すべての企業に当てはまるわけではありません。しかし、広告費の高騰、手数料負担の増加、顧客データの制約、アルゴリズム変更のリスクといった構造的な課題は、多くの企業が直面している現実です。
こうした課題を解決し、事業を次のステージに進めるために、自社ECへの移行を検討する企業が増えています。
自社ECには、手数料負担の軽減、顧客データの活用、ブランド体験の提供、モール依存リスクの分散といった、多くのメリットがあります。モールECと併用することで、新規獲得とリピーター育成を両立させることも可能です。
ただし、自社ECの成功には、適切な設計と継続的な改善が不可欠です。自社だけで試行錯誤するのではなく、Shopifyの構築・運用に精通した専門家のサポートを受けることで、成功への道を確実に、そして素早く進むことができます。
もし今、モールECの限界を感じているなら、それは自社ECを検討するタイミングかもしれません。まずは自社の状況を整理し、次の一手を考えてみてください。そして、自社ECへの移行を本格的に検討する際には、ぜひ専門家に相談してみることをおすすめします。
よくあるご質問
「モール全体が落ちている」というより、以前と同じやり方では伸びにくくなっているのが実態です。市場規模やモール全体の流通は伸びていても、競争激化で広告に出さないと埋もれやすくなり、広告費の高騰や手数料負担で利益が残りにくい状態が起きています。特に、広告投資を増やしにくい・価格や配送条件で不利になりやすい事業者ほど「売上が下がった」と感じやすいです。
下がる可能性は高いです。モールでは手数料に加えて広告費が積み上がり、合算で売上の20〜30%を支払っているケースもあります。一方で自社ECなら、たとえばShopifyのBasicプランは月額3,650円で、決済手数料は約3.55%といった水準なので、同じ売上でもモールに吸われるコストを抑えやすくなります。浮いた分を商品開発や顧客体験、CRMに回せるのが自社ECの強みです。
いきなりやめるより、併用でリスク分散するのが現実的です。モールは集客の入口として強い一方、アルゴリズム変更や規約変更など“自社でコントロールできない要因”で売上が揺れます。自社ECを持てば、モールで落ちた分を補ったり、自社ECで獲得した顧客をリピートにつなげたりと、役割分担ができます。まずは「新規はモール/リピートは自社EC」のように分けて設計すると進めやすいです。






