2026年4月6日、Shopifyの日本法人 Shopify Japanは、これまでShopify Plus限定だったネイティブB2B機能の一部を、BasicやAdvancedなどの通常プランでも追加費用なしで利用できるようにしたと発表しました。
卸売・企業間取引(BtoB)に取り組みたい中小事業者にとって、長年のハードルが一気に下がる大きな変化です。
これまで「やってみたいけどコストが…」と踏み出せなかった事業者にとっても、検討を始める十分な理由になるアップデートといえます。
本記事では今回のアップデートで何が変わったのか、どんな機能が使えるようになったのか、そして現時点での制限や注意点までわかりやすく解説します。
公式プレスリリース:Shopify、B2B機能の提供対象を拡大(PR TIMES)
これまでの課題:BtoBはお金がかかりすぎた
Shopifyでの卸売機能は以前から存在していましたが、その本格的なB2B機能は月額$2,500(約40万円)のShopify Plusプランを契約するか、月額$30〜$70程度の外部アプリを組み合わせることが前提でした。小売との掛け持ちで卸売も始めたいという小規模事業者にとっては、卸売のためだけにそのコストを負担するのは現実的ではありませんでした。結果として、ExcelやメールあるいはFAXによる手動管理を続けているケースも少なくありませんでした。
また、Shopifyが推進する「新しいお客様アカウント」には別の課題もありました。ログインのたびにメールアドレス宛にワンタイムパスワードが送られる仕組みのため、1つのアカウントを複数人で共有しにくく、担当者が入れ替わりやすいBtoB取引との相性が良くありませんでした。「他部署の担当者が発注するたびにいちいちパスワードを聞かなければならない」という不便さは、実際の運用上で大きなネックになっていました。
今回のアップデート:何が変わったか
今回の発表により、Basic・Grow・Advancedプランの事業者が、追加費用なしでB2B機能を利用できるようになりました。アプリ不要でBtoBの基本的な仕組みが標準機能として使えるようになったことで、月額4,000円程度の通常プランでも卸売サイトが構築できる環境が整いました。
各機能の詳細はShopify公式ヘルプも参照してください:B2B機能の概要(Shopify ヘルプセンター)
通常プランで利用可能になった主な機能
会社プロフィール管理
個人アカウントではなく「会社」単位で顧客を管理できます。取引先ごとに情報を整理でき、後述する担当者の紐づけも可能です。これにより、「誰が・どの会社として・何を発注したか」が明確に記録されるようになります。
カスタムカタログ(最大3つ)
会社ごとに卸値を設定したカタログを作成できます。たとえば「8掛けカタログ」「7掛けカタログ」のように、取引先の規模やロイヤリティに応じた価格設定が可能です。同じ商品でも取引先によって異なる価格を見せる仕組みを、コードなしで実現できます。
ボリュームディスカウント・数量ルール
まとめ買いに応じた価格設定ができます。「10個以上で単価10%引き」「ケース単位での発注のみ受け付ける」といったルールを標準機能で設定できます。
支払い条件(Payment Terms)
末締め翌払いなど、掛け売りに対応した支払い設定ができます。小売向けのクレジットカード払いと、卸売向けの掛け売りを同一ストアで両立できるのは大きな強みです。
最大の革新:「会社」単位の管理と担当者登録
今回のアップデートで最も大きな変化は、これまでShopify Plusでしか使えなかった「会社」という概念が通常プランでも使えるようになった点です。
従来は個人アカウントにタグを付けて卸売対応をするしかなく、「新しいお客様アカウント」ではワンタイムパスワードの共有問題がありました。今回の変更により、1社に複数の担当者を紐づけることができるようになり、この問題が根本的に解消されました。
たとえば「株式会社〇〇」というアカウントに「田中さん」「鈴木さん」の2名を登録しておけば、どちらが発注してもその会社の取引として記録されます。権限設定も柔軟で、マスターアカウント(注文・管理の両方)と発注専用アカウント(注文のみ)を分けることも可能です。担当者が変わっても会社アカウントは継続されるため、取引履歴が途切れることもありません。
また、BtoBとD2C(直販)が同一の管理画面・データ基盤で運用できるため、在庫の一元管理や売上分析も統合されます。Shopify FlowやShopify Paymentsなど既存機能もBtoB・D2C双方で活用でき、ツールの分断や手作業への依存を大幅に減らせます。これまで「卸売用に別のシステムを用意する」必要があったところが、Shopify一本に集約できるようになったのは、中小事業者にとって非常に大きな前進です。
導入効果の目安
Shopifyが公表している導入事業者の実績データは以下の通りです。いずれも「最大」の数値ではありますが、業務効率化と売上向上の両面で効果が出ていることがわかります。特に平均顧客単価の向上やリピート注文の増加は、卸売ビジネスの安定した収益基盤づくりに直結する指標です。
| 指標 | 効果 |
|---|---|
| バックオフィス業務時間 | 最大25%削減 |
| 平均顧客単価 | 最大40%向上 |
| セルフサービス注文(6か月以内) | 最大33%増加 |
| リピート注文頻度 | 最大20%向上 |
現時点での制限・注意点
機能が大幅に拡充された一方で、現時点ではいくつかの制限もあります。導入前にあらかじめ確認しておきましょう。
カタログは3つまで
通常プランではカタログの作成数が最大3つに制限されています。「Aランク取引先用」「Bランク取引先用」「新規取引先用」のように3段階であれば十分対応できますが、取引先ごとに細かく個別価格を設定したい場合は、引き続き外部アプリが必要になります。カタログとアプリの価格設定が二重に適用されるリスクもあるため、価格管理はどちらか一方に統一する運用がおすすめです。
スタッフ追加は売り手側の管理者のみ
買い手側の担当者を追加するには、現状では売り手(ショップ管理者)側が手動で行う必要があります。取引先から「〇〇さんもアカウントに追加してほしい」という依頼を受けるたびに対応する手間が発生します。買い手が自分でスタッフを管理できる英語版のアプリはすでに存在しており、日本語対応が進めばさらに使いやすくなることが期待されます。
通常プランとShopify Plusの違い
どちらのプランが自社の規模や要件に合うか、主な違いを以下の表で確認してみてください。シンプルな卸売運用であれば通常プランで十分対応できます。取引先が多く、細かい価格設定やカスタマイズが必要な場合はShopify Plusが引き続き適しています。
| 項目 | 通常プラン(Basic〜Advanced) | Shopify Plus |
|---|---|---|
| 月額費用 | 約4,000円〜 | 約$2,500(約40万円)〜 |
| カタログ数 | 最大3つ | 無制限 |
| 支払いオプション | 基本的な支払い条件 | 分割払い・デポジット等 |
| 個別価格設定 | アプリ併用が必要 | 高度な管理が可能 |
| 向いているケース | シンプルな卸売・スモールビジネス | 大規模取引・複雑な価格管理 |
こんな活用シーンに向いています
B2B機能の活用方法は卸売だけにとどまりません。Shopifyの柔軟な仕組みを活かして、さまざまなビジネスシーンに応用できます。
小規模な卸売・問屋業
月額4,000円程度から、アプリなしで卸売サイトが構築できるようになりました。FAXや電話での注文受付をデジタル化したい事業者にとって、低コストで導入を検討できる環境が整っています。取引先にとっても、ECサイトで買い物するような感覚で発注できるため、受発注業務の双方の効率化が期待できます。
小売+卸売の一元管理(D2C併用)
BtoBとD2Cを同じ在庫・管理画面で運用できるため、ツールの分断や手作業への依存を減らせます。一つのShopifyストアで一般消費者向け販売と卸売を同時に展開したい事業者にとって、在庫の二重管理が解消されるのは大きなメリットです。「小売価格」と「卸売価格」をカタログで使い分けながら、同じ商品ページを共用できます。
社内発注システムとして活用
手動決済(銀行振込など)を使えば手数料はかかりません。ECの仕組みをそのまま社内発注・在庫管理のプラットフォームとして活用することも可能です。拠点ごとに異なる価格をカタログで管理し、誰がいつ何を発注したかをアカウント単位で記録できるため、業務フローの可視化にも役立てられます。将来的にSalesforceなどの基幹業務システムとAPI連携させることも視野に入ります。
まとめ
今回のアップデートにより、月額4,000円程度の通常プランでも、卸売価格設定・会社単位の顧客管理・掛け売り対応などBtoBに必要な基本機能をアプリなしで揃えられるようになりました。カタログ数の上限やスタッフ管理など現時点での制限はあるものの、スモールビジネスがBtoB取引を始めるハードルは大幅に下がっています。
ECサイトとして使い始めたShopifyを、そのまま卸売・社内発注のプラットフォームとして拡張できる時代が本格的に始まりました。まずは通常プランで試してみて、取引規模が拡大したらShopify Plusへの移行を検討するというステップも現実的な選択肢になっています。英語版のみの対応機能についても日本語化が進めば、さらに使い勝手が向上することが期待されます。

よくあるご質問
かかりません。Basic・Grow・Advancedプランの月額料金のみで、今回解放されたB2B機能を利用できます。ただし、細かい価格設定などを外部アプリで補う場合は別途アプリの費用が発生します。
はい、できます。すでに通常プランでストアを運営している場合も、同じストア内でB2B機能を有効にして卸売と直販を一元管理できます。新しくストアを立ち上げる必要はありません。
カタログ機能を使って会社ごとに価格を設定できます。ただし通常プランではカタログは最大3つまでとなっています。それ以上の細かい個別価格管理が必要な場合は、外部アプリとの併用をご検討ください。
はい、支払い条件(Payment Terms)の機能を使うことで、末締め翌払いなどの掛け売りに対応できます。小売向けのクレジットカード決済と、卸売向けの掛け売りを同一ストアで両立することも可能です。





